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文豪とようかん

文豪とようかん

文豪ようかんがいよいよ登場しました。武家ようかんが発売されてから10年の間に何度も
案は出ては消えて行った文豪羊羹。ようやく日の目を浴びることが出来ました。

刀剣ようかんは2013年の10月7日に登場した記録が残っていますが、当初はあまり売れず、
作られても日の目を浴びることになるのは2015年の1月、というより2月~3月だったので、
1年以上かかりました。

文豪ようかんを作る案が出たのは、夏目漱石が羊羹を好んで食べており、
その小説にもようかんがしばしば登場するからです。

たとえば夏目漱石は、その小説『草枕』の中で、

余はすべての菓子のうちでもっとも羊羹が好だ。別段食いたくはないが、あの肌合が滑らかに、
緻密に、しかも半透明に光線を受ける具合は、どう見ても一個の美術品だ。
ことに青味を帯びた煉上げ方は、玉と蝋石の雑種のようで、はなはだ見て心持ちがいい。
のみならず青磁の皿に盛られた青い煉羊羹は、青磁のなかから今生れたようにつやつやして、
思わず手を出して撫でて見たくなる。西洋の菓子で、これほど快感を与えるものは一つもない。
(青空文庫より引用)

と述べています。谷崎潤一郎も『陰影礼賛』の中で、

かつて漱石先生は「草枕」の中で羊羹の色を讃美しておられたことがあったが、そう云えばあの
色などはやはり瞑想的ではないか。玉のように半透明に曇った肌が、奥の方まで日の光りを吸い
取って夢みる如きほの明るさをふくんでいる感じ、あの色あいの深さ、複雑さは、西洋の菓子に
は絶対に見られない。クリームなどはあれに比べると何と云う浅はかさ、単純さであろう。だが
その羊羹の色あいも、あれを塗り物の菓子器に入れて、肌の色が辛うじて見分けられる暗がりへ
沈めると、ひとしお瞑想的になる。人はあの冷たく滑かなものを口中にふくむ時、あたかも室内
の暗黒が一箇の甘い塊になって舌の先で融けるのを感じ、ほんとうはそう旨くない羊羹でも、味
に異様な深みが添わるように思う。

夏目漱石の事を引用しながらやはり羊羹について語っています。

このようなことから文豪と羊羹はとても相性がよく、うちのようかんのコンセプトにピッタリだっ
たのです。しかし商品化はなかなか進まず。きっかけはとある地方の文学館などからのオファーが
あり、ようやく商品化に漕ぎ着けました。

うちの商品の販売先は以前から博物館や美術館が多かったのですが、刀剣なども博物館からのオフ
ァーがあったことも作成のきっかけの1つでした。今度は文学館から。

文学館などもマンガやアニメやゲームの影響か、急に若い女性の来場者が増加したことから、商品
の相談が来たようでした。

さて、これからラインナップを増やしていきたいのですが、こちらはどのくらい世間で評価頂けるのか
楽しみであります。

写真は一夢庵の青羊羹。